よくある症状シリーズ 〜めまいがする〜
皆様 こんにちは。
山本 あん奈です。
本当に急に寒くなりましたね。
自転車での訪問診療はそろそろ半袖で厳しくなってきました。(笑)
さて私は、クリニックでは主に
急性疾患を担当してます。
このブログでは「よくある疾患 (common disease) 」シリーズ「よくある症状からシリーズ」
2本だてでやって参ろうと思ってます。
もちろん
当院で診察させていただいた場合
患者さんお一人お一人に
診断をお伝えした後で
しっかりその疾患のご説明、その症状から考えられる疾患などご説明させていただこうと思いますが
聞き逃したり、
繰り返しお聞きになりたいときに、自分のペースでお調べできるように、
また、この症状で何を考えて、どう診察されるんだろうという時に参照になればと思っております。
コツコツ書き溜めて行こうと考えております。
UPの歩みは遅いですが
ゆっくりお付き合いいただけたらと思います。
さて今日は、「めまい」についてです。
みなさんが想像する「めまい」の症状ってどんなものでしょうか?
めまいとは、、、
実はみなさん、それぞれによって表現している「めまい」厳密には1つじゃないんです。
実に、多くの状態を「めまい」という言葉に込めておられます。
我々医師は、皆様のおっしゃる「めまい」が、医学用語で言う所のどんな状態に当たるかそれを探っております。
医師は、「めまい」という言葉をそのまま使ってはいけない!と指導されます。
もう少し、ちゃんとその方の表現しているものを
医学的な分類に落として鑑別しなさいという意味です。
それくらい、「めまい」に込められた意味は多種多様です。
なのでまずはいわゆるどのタイプのめまいなのか問診させていただきます。
めまいのタイプ
よくあるめまいのタイプとしてこんなものがあります。
①回転性めまい(Vertigo)
「地球がぐるぐる回る」「目が回る!!」というタイプです。
このタイプのめまいの中でもたくさんの疾患があります。
ざっくり大きく二つに分けるなら
・耳(内耳)からくるめまい(平衡感覚を司るところ)→末梢性という言い方をします。
・脳からくるめまい(主に小脳、脳幹部と言われる部分です。)→中枢という言い方をします。
です。
回転性めまいは、圧倒的に耳からのめまいが多いのですが
頻度が低いものの、小脳や脳幹部と言われる部分の、脳出血、脳梗塞、血流が悪いことなどでもグルグル回った感覚になります。
医師は、圧倒的に多い耳からくるめまいの中から、この頻度の少ないけど重篤な脳の障害を見逃さないために
必死に問診、診察、画像検査などで鑑別診断をつけていきます。
症状がきつい(嘔吐が激しい)ときは、先にめまい止めの点滴をしてからの診察になることもあります。
症状がきつい=脳でもありません。
ただ、診察室から、自分の足で歩いて帰られなければ、頭の評価をした方が良いかもしれません。
その場合はクリニックから頭部CT、MRIの撮れる病院をご紹介させていただきます。
②倒れたり、意識が遠のく感じ、失神しそう(pre-syncope)
このタイプは、「意識が遠のいて倒れそうになった」という訴えです。
これも「めまい」と表現されます。
そのほかに
・血の気が引くような
・気が遠のくような
・目の前が真っ暗になるような
・奈落の底に落ちるような
と表現される方もいます。
このタイプは一過性に脳への血流が途絶えている可能性を探っていきます。
具体的には、
不整脈がないか(心血管性失神)
貧血/脱水がないか(立ちくらみの原因)
血管迷走神経反射(足の血管がギュと収縮できず頭に血が行かない時間がある。)
→怒った後、すごく怖かったこと、あとは排便を力んだり、咳した時などにくらっときたというのがキーワードです。
すごく緊張して緊張してふっと緩んだ時に、血管が緩んで頭がくらっとするというものです。
コロナの予防接種の後の副反応の一つとして、挙げられてますね。
ここら辺を探っていきます。
③真っ直ぐ歩けない、車酔いと似てる(平衡障害 disequilibrium)
このタイプは
「船酔いした感じ」の気持ち悪さです。
・頭がフワーとする
・真っ直ぐ歩けない
と表現されます。
人は、目で見て、脊髄、耳、脳、そして筋肉全ての感覚で立てて真っ直ぐに歩けるという複雑なバランスで成り立っています。
ちょっとでもこのバランスが崩れると真っ直ぐ歩けません。
例えばお薬やアルコールでもふらつくことがあります。
それはこのバランスが崩れてしまうからです。
視力が悪くても、下肢筋力が弱っててもふらつくのです。
もちろん脳の障害でもこのバランスが崩れます。
なのでこの場合も頭部の画像検査をさせていただくことがあります。
④ふらつく(light-headeness)
このタイプは
「体がふわふわする。」「ふらつく感じ」「フラフラする」
つかみどころがない訴えです。
「体調が悪い」と言った感じでしょうか?
これも人によっては「めまい」です。
この鑑別疾患は、かなりたくさんあります。
これだけでははっきりしないので、もう少し詳しく突っ込んで聞かせていただきますね。
このようにたくさんの疾患を含んで「めまい」という言葉は使われます。
ではその様々な疾患をどうやって診察していくのか?というところに入っていきます。
診察では何を見ているのか?
(問診)
問診では詳しく、上のどのタイプに当たるかなと考えながら状況をお伺いします。
初めてのめまいなのか、しょっちゅうなのか?
体位は関係あるか?
例えばよくある「良性発作性頭位めまい症」だと
・頭の位置を変えたら「急に」めまいがして
・じっとしてたら1分以内には止まる
・聴力は落ちてない
などというように詳細な問診でわかることが沢山あります。
これは頭(中枢性)からかな?と思う病歴としては
・突然発症
・生活習慣病(糖尿病 脂質代謝異常)がある
・頭痛
・喋り方がおかしい
・顔の絞れ
などがあります。
ここを見落とさないように見て参ります。
(身体診察)
診察では、血圧や体温、脈拍、呼吸数などチェックを行います。
また眼振という目の揺れを見たり、神経に何か異常がないかなどを診ています。
特に神経所見は、話し方に問題がないか、ものが二重に見えないか?耳は聞こえるか?、顔が痺れないか
真っ直ぐ歩けるか?など詳しく見て参ります。
そのほかパッと立つことで血圧が下がらないか
貧血がないか?
上記のように様々な疾患が想起されますので
色々な角度で鑑別診断をつけて参ります。
(クリニックでできる検査)
採血や、心電図が必要となることもあります。
(画像診断)
やはり、脳の疾患を除外しないといけない時は、頭部CTや頭部MRIを撮るために、ご紹介させていただきます。
頭部CTでは主に脳腫瘍がないか脳出血がないか、時間の経った脳梗塞がないかなどを見ています。
頭部CTにも映らないような早期の脳梗塞やの脳の血管の異常はMRIを参考にします。
いかがだったでしょうか?
「めまい」は非常に奥が深い症状です。
診察に時間がかかってしまう症状の一つです。
なるべく時間的な余裕を持って診察できた方が良いし
診察によっては、大きい病院にご紹介になります。
症状的に待てそうなら
混んでいない時間帯や対応できる人数が確保できる時間帯をご案内したいと思います。
とにかく、「めまい」がする!と思ったら
まずお電話でご連絡くださればと思います。
お電話で、直接大きな病院に行った方が早く適切な処置につなげることができると思ったら
「救急車を呼んでください!」とお話しさせてもらうこともあります。(例えば明らかに脳梗塞を疑う場合など)
まずは困ったらお電話をくださいね。
あん奈