一刻も早く風邪を治したいので抗生物質(抗生剤)を処方してください!?

こんにちは。

コロナウイルス感染症が、5類に以降して2週間ほど経ちました。→こちら
皆様、体調を崩さず過ごされているでしょうか?

マスクが自己判断になり
GWも過ぎました。
皆様の周りは、どんな変化があったでしょうか?

5類移行

 

 

私の印象としては
少し発熱外来は増えましたが
いっときのような大混乱はないように思います。
検査が自己負担になったり、外出制限がなくなって
皆様、上手に自己判断、自己選択されて診察するか、検査するか決められているように思います。

長かったですもんね。ここまで・・・・
いろいろな立場の方がおられると思いますが
皆様それぞれ本当に、未知のウイルスだったコロナウイルスと一所懸命向き合って来られたと思います。

もちろん、5類になったとしても
いまだに後遺症で悩まれている方を当院でもたくさん診ておりますし
重症化する可能性があることも否めません。
今までと同じように、軽んじることはなく適切に対応したいと思っております。

発熱外来受診希望者は→こちら

合わせて
コロナワクチン春接種も始まりました。
こちらも大きな混乱なく、適応のある方で希望される方が予約に来られている印象です。
→予約希望の方はこちら

 

さて、今日はそんな発熱外来でよく聞かれる質問を取り上げたいと思います。
実は今ブログを見直していると
ちょうど2年前にも同じようなブログを書いていました!→こちら

でも最近もよく聞かれるので
2年越しにまた少し記事もリニューアルして再掲させていただきます。

 

早く風邪を治したいので『抗生物質(抗生剤)を出してほしい!』

30代の女性 もともと元気な方
症状は、発熱、咽頭痛、咳、痰、鼻水、体がだるい
2日ほど前からとのことで
周りに進められて発熱外来へ。

PCR検査では、コロナウイルスでもインフルエンサウイルスでもなく
おそらく何か、有名でない名前のウイルス感染症と思われる患者さん。

診察上も
喉が全体的に赤い(扁桃腺炎ではなさそう)
肺炎のような音はしない(肺炎ではなさそう)

 

『おそらく風邪のようなものでしょう。それぞれの症状に合うお薬を出しましょうか?
よく食べて、よく休んでください。数日で元気になると思います。』

『いえ、先生、一刻も早く治したいのです!!抗生物質(抗生剤)をだしてください!!!』

抗生剤

風邪に抗生剤は効くかどうか!?

実はこの質問めちゃくちゃ多いです。

「抗生剤(抗生物質)というのは『病原体』をやっつける強いお薬」
子供の頃からそう刷り込まれて来ていると言っても過言ではありません。

 

かくゆう私も研修医になるまで、実は『風邪に抗生剤』に対してそんなに違和感なく
子供の頃から「コーセーザイってよく分からないけどよく効く薬」と
思ってきました。

 

研修医になりたての頃
「世の中にはウイルス感染症と細菌感染症がある。」
「抗生剤(抗生物質)は細菌にしか効かない」
『だから、風邪(ウイルス感染症)に抗生剤は全く意味がない!!』
と指導医の先生がおっしゃったのを聞いて
(恥ずかしながら、)かなりの衝撃を受けました。。。

そーなんだ!!!???と。

 

そもそも論。風邪って何!?
ウイルス?細菌?って何!?

さてそもそも風邪って何なんでしょうか?
それを解く鍵は、ウイルス細菌という2つの病原体があることを知るというところにあります。

ウイルスは、細菌よりかなり小さい病原体なんだそうです。

ウイルスは、この世の中にたくさん、たくさんの種類があります。
インフルエンザウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、ノロウイルス、、、、、、、
そして新型コロナウイルス。。。。
ここらへんの名前は、有名所なので
みなさんもお聞きになったことがあると思います。

でも実は世の中には、きいたこともないような
名も知らぬウイルスもたくさん、たくさんあります。
たくさんのウイルスが存在していて少しづつ特徴があるのですが
安心したいのはウイルスは、大体同じ、そんなに厳密に分けなくていいのです。
ウイルス感染全般に言えることがあります。

ウイルスは小さく、全身を駆け巡り様々な症状を引き起こします。
熱が出て、節々が痛くて、鼻水も出て、咳も出て、皮疹も出て、体がだるくて、下痢をして、、、、
といういわゆる『風邪症状』・・・・

『風邪』と呼ばれているのは、いわゆる『ウイルス感染症』
具体的に〇〇ウイルスとは分からなくても
『なんらかのウイルス感染症を疑う。そしておそらく御本人の免疫力で打ち勝って症状が時期によくなるだろう』
というときに、医師は『風邪でしょう』と言います。

ただ、ウイルスはだいたい同じと言っても
今回のコロナウイルスのように、もしくはインフルエンザのように
社会的に『ちゃんと分けておきたい!』社会的にはっきりさせておきたいもの
抗ウイルスが特別に用意されているものがあります。
そういうものだけキットやPCR検査が開発されているのです。

 

一方、細菌感染
溶連菌、肺炎球菌、髄膜炎菌というような『細菌』が
扁桃腺だったり、肺だったり、髄膜だったり
一つの「この臓器!」という形で感染し
それぞれ扁桃腺炎、肺炎、髄膜炎という臓器の炎症を起こします。
こちらは、抗生物質(抗生剤)の出番になります。

 

じゃあ抗生物質(抗生剤)って何よ!?

抗生物質(抗生剤)は、『細菌』に対する殺菌薬です。
ある程度大きな的じゃないと当たらないのだそうです。
つまり、ウイルスには効果がないのです。

つまり風邪に効く抗生物質(抗生剤)はないのです。
自分の免疫力で追い出すしかありません。

一方細菌感染は抗生物質(抗生剤)が必要になります。
また、抗生物質(抗生剤)にはたくさん種類があります。
それぞれの菌に効く抗生物質(抗生剤)が分かっております。
なのでこの臓器には、この菌が居ることが経験的に多いということを踏まえ抗生物質(抗生剤)を選びます。

また内服でいくか、点滴で行くか(点滴のほうがだいたい強いのですが)
投与方法は一気にどーーんと入れたほうがいいのか
こまめに一日に何回も入れたほうがいいのか

など医師は、かなり抗生物質(抗生剤)を使うときには頭を使って処方してます。

出しまくったら何が悪いの?大は小をかねる的に
とりあえず抗生物質(抗生剤)を出しておいてもいいのでは?? 耐性菌のこと・・・

いやあ。
私も、抗生物質(抗生剤)をだしておいて害がないなら全然出せばいいと思うのですが

そういうわけにも行かない事情があります。
それは耐性菌の問題です。

抗生物質(抗生剤)をやみくもに出すと
細菌も学習してもっとつよいものに進化します。
いわゆる『耐性菌(たいせいきん)』です。

細菌と、抗生物質(抗生剤)の熾烈な戦いが
歴史的に繰り返されてきました。
人類が、抗生剤を編み出すと、それを学習しそれを効かなく進化した細菌ができる
という・・・・・

そのおかげでどんどん強い、強い細菌が現れています。

 

医師の暗黙の了解で
不必要な抗生物質(抗生剤)投与は『罪』である。
というものがあります。

先程投与回数のことを言いましたが
世の中には1回の投与で、しかもいろんな菌に効いて
静脈注射と同等に効果があると言われている在宅医療などではかなり重宝する
内服抗生物質(抗生剤)があります。
すごく使いやすく重宝するのですが
最近、この抗生物質に対する耐性菌が出始めています。

医師たちは
このような使いやすい抗生物質(抗生剤)を
温存するために、
菌を想定すること、その想定菌だけにピタッと効く抗生剤を選ぶこと
を一所懸命学んでおります。

なので
風邪に抗生剤を出したということ
ウイルスと想定しているのに抗生剤を(安易に)処方した
ということは医師の間では実はちょっと
後ろめたい、恥ずかしいこととなります。

もちろん、ウイルスなの?細菌なの?と見分けがつかないときも正直あります。
けれども医師はなるべくなら
耐性菌を生まないように
日々、安易な判断で抗生物質(抗生剤)を出さないように努力をしております。

 

 

じゃあ「風邪薬」って何よ!?

ウイルスに対して抗生剤が効かないってことは、
今まで風邪で病院でもらってたお薬は一体!?。。。
と思うかもしれません。

 

風邪薬の内容というのは
いわゆる症状を抑えてあげることで
楽に過ごせてよく休めるように!というお薬です。
医学用語で「対症療法薬」と言います。

 

症状を整えて、よく休めることで免疫力をUPして追い出しましょう!ということです。

症状があって苦しいと
体が休まりません。
これはこれで大事なお薬だといえます。(必須ではないです!!)

免疫力??どうやったらUPするの?

さてほかにはどうしたら免疫力を上げて
ウイルスを追い出せるの?それは、睡眠です。

そしてしっかり食べること。

よく食べてよく寝る

あなどることなかれ!このよく寝てよく食べることが治る一番の近道です。

 

この健康的な生活が苦痛なく過ごせるようにと
症状を取るお薬=「風邪薬」「対症療法薬」が出されるわけです。

 

もちろん、ある種のウイルスは抗ウイルス薬があります。(インフルエンザとかヘルペス)
ただウイルスの症状から、区別は難しく
基本的には、ウイルス感染症は自分お免疫力で押さえ込むことが可能なことが多いです。
だいたい5日!で治る。
と思ってください。逆にそれより長引く症状がある場合
本当にウイルス感染?と調べる必要があります。

採血をしたり、レントゲンを撮ったり
本当は細菌感染?いやそれ以外の原因?と調べる必要があります。

 

普段からできることは?

ウイルス感染を避けるためにもしくはかかっても免疫力で追い出せるように

普段からできること。

それは
手洗い、うがいです。

手洗い うがいの絵

 

 

 

そしてバランスのとれた食事をとること

適切な食事のイメージ

運動による体力づくり

 

といった健康的な生活が効いてきます。

おわりに

さて今日はウイルスと細菌の違いについて話してみました。

正しく「抗生物質」を必要な時にだけ使う事
これは耐性菌を世の中に増やさないためにもかなり重要な事です。

皆様がこういった質問をしてくださることは
医師界と患者さんのギャップを埋める
大切な機会と考えています。

しんどいときに
つべこべ言わずに抗生剤がほしい!!
とおもわれるかもしれないのにごめんなさいね。

一度はこの話をさせていただきますね。
でもその上でまた相談しましょう!!

あん奈