問診で、患者さんにしつこいくらい詳しく尋ねるワケ。例えばrestless X syndromeの場合。。
こんにちは。
外来を毎日やっていると いつも思うことがあります。
それは 患者さんがおっしゃる「症状」は
本当に詳しく聞かないと
本当にその方が「本当に困っている症状」に辿り着かない ということです。
そして、それが分からないと
「診断」にたどり着けないということです。
私もよく研修医の頃に
先輩の先生方に
「問診でかなりのことが分かる。再現ビデオが作れるくらい手に取るように状況を患者さんに教えてもらう必要がある。」 と何度も何度も教えてもらいました。
逆に、丁寧な問診なしで
先に「検査」をしてしまうと
ノイズ(本当はその訴えとは関係のない異常値)に騙されて
「真の診断にたどり着けない」とも
繰り返し教えていただきました。
過去ブログ
問診のOPQRST!(医師に何を伝えればいいのか?)【2022.7.13更新】→こちら
でも書いたように
問診では下記の質問を基本骨格に
一筋縄に診断がつかないときこそ
しつこくしつこく
頭の中で、再現ビデオを作って再生できるくらいに
「どういうことを患者さんが仰っているのか?」 確認していく必要があります。
さて私が毎月楽しみに定期購読している雑誌の中に
医学書院さんの 総合診療 という雑誌があります。→こちら
今月号の特集は 「初診・救急外来で出合う 精神疾患と間違えやすい内科疾患」 でした。
医学書院 総合診療 HP→こちら
私は、このような特集にとても興味があります。
普段外来で主に、初診を担当していますので
自分が無知、未熟なばかりに
真の診断にたどり着けないことへの恐怖は常にあります。
(若手の)医師なら誰でも多少はこの感覚を持っていると思いますし
それは、ある意味「持っておかなければならない事」「正しく恐れておく必要がある事」だと思っております。
その上でさらに
「本当は内科疾患なのに、精神疾患と間違えてしまう(精神科に紹介で思考を止めてしまう。)ことはないか」
という恐れも常に持っておかないといけないと
常々思っております。
まさに、この特集のように
「精神疾患かもしれない。と思った時には、今一度本当に内科疾患でないのかを見直す」
必要があると感じております。
早速読んでみて
どのページも
なるほどなあ。と勉強になることばかりでしたので
すべてココロに留めておこうと思っております。
(また少しづつブログでもご紹介します。)
その中でも
「なるほど、コレはしっかり問診で汲み取る必要があるなあ〜」と思った事があり
今日はその話題について取り上げたいと思います。
前にも、ブログで書いたことがある
「むずむず足症候群」にまつわる話です。
「むずむず足症候群」が何かは下記、ご参照ください。
●むずむず足症候群(レストレスレッグ症候群:RLS)と鉄欠乏の密接な関係!?→こちら
むずむず足症候群のおさらいをサラリと。
●むずむず脚症候群(レストレスレッグ症候群:RLS)とは?
むずむず脚症候群とは
夜寝ている時に足がむずむずして眠れない!
というものです。
足を動かすと楽になるので、
足を動かさずにはいられない!という衝動に駆られます。
この気持ち悪さの表現は人によって異なり
「むずむず」「ビリビリ」「ソワソワ」など色々な表現があります。
夕方から就床後の夜間帯に悪化するため
眠れないという方が多く
叩く,もむ,歩くなどで少しマシになるとお話しされます。
●むずむず脚症候群の4つの特徴
むずむず脚症候群には4つの特徴があります。
①じっとしていられないほどの下肢の気持ち悪さがある。
②1日の中でも波があり夕方以降に悪くなる。(特に夜間)
③安静にしていると症状が出る。
④足を動かすと良くなる。
●原因は?なんでこんなことが起きるのか?
●特発性
原因がはっきりしないもの。
ドーパミンという物質に関連したお薬が奏効するので、その関連の神経系異常が疑われています。
●二次性
薬剤性(お薬のせい 抗うつ薬 抗ヒスタミン薬 抗てんかん薬など)
腎不全
妊娠中
鉄欠乏
亜鉛欠乏
神経疾患
その他の疾患(糖尿病 クローン病 関節リウマチなど)
●治療はどうするのか?
①原因となる基礎疾患の治療(二次性の場合)
②ライフスタ イルの工夫(特に睡眠に関する)
③薬物治療
などがあります。
でも実は、むずむずするのは、足だけではない!!!
レストレス“X”症候群(RXS)とは?
さて、これを踏まえたうえで
今日の真髄に入っていきます。
実は、ムズムズするのは足だけではない!のです。
千葉大学医学部附属病院 総合診療科 佐藤先生は
論文の中で(下記参考文献参照)で
「legs」(足)だけでなく
X=身体のあらゆる部位
に生じる
睡眠の支障となり、安静で悪くなり
動かしたり、触ったり、刺激したくなる不快な感覚を
RLSのサブタイプとして
Restless X syndrome(R X S)という概念
として提唱されました。
複雑な患者さんの多彩な訴え・・・
その中でも、ポイントは、、、
足だけでなく
どの部位でも起こり得るとなると
本当に患者さんは多彩な訴えで受診されることになります。
(その箇所により訴えが違うわけですから。)
・息苦しい
・胸痛
・頻尿
・腹痛
・陰部違和感
大事なのはそこからで
それらがどのように発症しているのかです。
そして、この「RXS」を疑う最大のポイントは
・安静時に発症している。(「夜間横になったら」、「夜寝ているときに」など)
・そして、その症状はその部位を動かしたり刺激するとましになる。。。
ということです。
「眠れない」という訴えがあったときに
単に「不眠症」と片付けるのではなく
「なんで眠れないのか?」と深堀りすると
実は、眠る=安静にすると
様々な症状が起きて、それで目を覚ましている可能性があります。
例えば
・息苦しくて目が覚めるけど、寝転んだまま深呼吸してたらマシになってまた眠れる。
・尿意で目が冷めて、トイレに立って少し排尿するだけで落ち着いてまた眠れる。
など。
詳しくお聞きしないで
睡眠薬を出すだけでは
「真」の診断には絶対たどり着けないと
再確認しました。
そもそも「むずむず」という表現も・・・
そもそも、この「むずむず」も人によっては
表現が異なると思います。
「ちくちく」
「いーーーってなる」
「燃えるような」
その方その方で
なんて表現されるか幅がある事を見越して
お伺いしないといけませんね。
いやあ、、だから診断って奥深く難しいですよね。
このように
患者さんが
「何を“主訴”に受診されるか?」
主訴は一緒でも
実に様々な鑑別診断があります。
逆もあり、同じ疾患なのに、いろんな主訴があったりします。
・それぞれの表現も異なり
・関係ないと思って言っておられない事もきっとあり
・他院に受診したけど悪いと思っておっしゃらなかったり(ぜひ、教えて下さいね。)
・受診する前に、ドラッグストアでなんらかのお薬を使った経緯があったり(これも知りたいです。)
・民間療法としてなにかされておられたり(これも知りたいです)
本当に多彩な背景があります。
ちょっと聞いただけでは
すぐ診断に繋がらないこともあり
特に
症状が改善しない
基本的な検査ではなにも引っかからない
時にはますます「問診」が大事になってくると本当に思います。
いやあ、だからこそ、外来って診断って、本当に奥深いです。。。。
おわりに
さきほども論文をご紹介させていただいた
最近、テレビでもよく取り上げられている
千葉大学医学部附属病院 総合診療科をご存知でしょうか→こちら
他の病院では診断のつかなかった疾患を
ありとあらゆる角度から
再現ドラマを作るように
問診に問診を重ね複数の医師が
「診断名にこだわって追求していく・・・」
ということで有名な総合診療科です。
その診察のお陰で救われる方がいるのは
ありがたく
日本にそういう機関があって心強いことだなあと思います。
私も興味があり機会があればぜひ見学してみたいなあなんて思っております。
ただ私は
一般の個人開業医ですので
日々の診察においては
時間の制約もあれば
自院で、できる検査も限られております。
できることは雲泥の差かもしれませんが
それでもなるべく日々
患者さんのおっしゃっている事の
「真」の部分になるべく近づくべく
これからもしつこく、診察の際は皆様に色々伺わせていただけたらと思います。
どうぞ、これからも
「医師に協力する」ような気持ちで
問診に付き合ってくださるとありがたいです。
あん奈
過去の参照ブログ
問診のOPQRST!(医師に何を伝えればいいのか?)【2022.7.13更新】→こちら
問診のOPQRST!(医師に何を伝えればいいのか?)【2022.7.13更新】
●むずむず足症候群(レストレスレッグ症候群:RLS)と鉄欠乏の密接な関係!?→こちら
むずむず足症候群(レストレスレッグ症候群:RLS)と鉄欠乏の密接な関係!?
参考文献
●Rurika Sato et al. Restless X syndrome: a new diagnostic family of nocturnal, restless, abnormal sensations of various body parts. Diagnosis (Berl). 2023 May 15;10(4):450-451.