人生の最期を迎えるときの医療(ターミナルケア)についてお話します。⑧時期別の状態とケア(亡くなる数ヶ月前)
さて、コロナ第8波を肌身で感じております。
インフルエンザAもBもボツボツ出てきました。
ひきつづき、感染対策を続けて行きたいと思っております。
ターミナルケアのシリーズを続けております。
是非シリーズでお読みくださいね。
このシリーズのブログ
① 導入編→こちら
② 最期のときの3つのパターン→こちら
③ 全人的苦痛という考え方とは→こちら
④ そもそも緩和医療とは?→こちら
⑤ 死を受け入れるということ→こちら
⑥ スピリチュアルな苦痛?→こちら
⑦ 予後予測について→こちら
さていよいよここからは、残された時間に合わせたお話をしていきましょう。
緩和ケア普及のための地域プロジェクト(厚生労働科学研究 がん対策のための戦略研究)より
『これからの過ごし方について』というパンフレットがあります。
このパンフレットもとても参考になるので是非御覧ください。→こちら
『これからの過ごし方について』
今日は、残された時間が数ヶ月の段階のお話をします。
これから綴るお話は
私が今まで経験した中の個人的な主観も含まれているかもしれません。
ご自分の主治医の先生と少し考え方が違っても、今の主治医の先生が間違っているとか、こうしないといけないというものではありません。
なんどか言いましたが、私は、ターミナルケアは、『お産』と似ていると感じます。
どの『お産』も全く同じ経過ではいきません。
毎回ドラマがあります。
同じように『死にゆく時』にも全く同じ経過はないと感じています。
医療者は、患者さんやご家族が、なるべく本人の望む形で
『お看取り』に持っていけるように、サポートしたいと思っております。
●このときのお体の様子は
残された時間が数ヶ月前でも
さほど見た目には変わらない方も多いです。
病状は比較的安定しており、生活機能もある程度今までと変化ありません。
患者さん自身、『体はまだ動くよ!』という人もたくさんおられます。
旅行や、お仕事などご本人が希望することは何でもやっていただければもちろん大丈夫です。
ある程度落ち着いた状態ですので、患者さんも家族も今後のことを話し合っておく余裕があると思われます。
告知するしないの問題がありますが、(→こちら にも少し触れました。)
今後のことについて、患者さんと医療者でこの時期にしっかり今後の起こりうる変化を共有しておけば
大きなブレはないまま経過する印象があります。
●この段階で医療者が気にしておくこと、患者さんがクリアしておくべきこと
①あらゆる症状をなるべく抑えること。
②こころのケア(本人は受け入れているのかどうか)→全人的苦痛という考え方とは→こちら
③身の回りの社会的なことに対する援助(金銭的な問題など)はできているか?
④家族への説明(家族はこれからの事に納得して不安がないか)は足りているか
⑤介護に対して困っていることはないか?
⑥栄養にまつわる問題(点滴をどこまでするのかなど)
お口から食事を取れないときどうするのか相談しておく
→こちらに関しては、
『もし、お口から食事が食べられなくなった時の事を考えてみたことはあるでしょうか?』→こちら
このブログを御覧ください。
などです。
●毎回、その方にあったチーム編成で。
もちろん、すべてを医師だけで解決できるわけではありません。
医師は、痛みや症状のコントロールや家族への説明をメインに行います。
この段階で、上記のような問題が残っているなら
患者さんの抱えている問題、お一人お一人に合わせたチームで
なんとか解決できる方法を模索していきます。
そのためその方を支える医療チームメンバーは、医療職だけではありません。
ヘルパーさんやケアマネさんといった生活を支えるメンバーと
訪問看護師さん(看護師さんは、生活と医療を両方診れる架け橋になる存在です)
薬剤師さん、リハビリの先生たち(理学療法士さん 作業療法士さん)
そこに医師が加わります。
その方によってチームに宗教家の方が入ったり、栄養士さん、歯科の先生などが加わることもあるでしょう。
ここで、医師の行うもうひとつの大切な事としては、
医療チームの誰かが、その方のケアなどを不安に思っているようなときは
みんなで話し合う機会を設け
患者さんを中心に、ご家族、そして支えるケアチーム(ヘルパーさんやケアマネさん達も)みんなが
不安がなくご本人をサポートしていけるようにチーム力を高めて行くことです。
みんなの力で
その方らしい最期の時を迎えられるようにサポートしていきます。
●ちょっと話がそれますが・・・
医療を含めた生活やその先にあるお看取りって本人や家族が中心であって医療者が前面にでるとうまくいかない事も。。。。
さて、少し話がそれますが。。。
先日【日本在宅ホスピス協会 全国大会 in 福井】に参加させていただきました。
といっても、on timeは診療中でしたので、アーカイブ配信を聞かせていただいたのですが、、、
視聴させていただいて、前から思っていたことがやはり強く感じました。
それは何かと言うと
今まで『生きる』ってその人の人生だったのに
『亡くなる』となったら医療者が前面に立って仕切りだすのはちょっと違うんじゃないかな?
と言うことです。
その人の人生の中に
『生』の先に『死』があるので
好きなように生ききっていいのでは
ということです。
すごく感銘をうけたので下記にリンクを載せておきます。
水中出産、自宅出産、旦那さんの立ち会い、無痛分娩などなど。
安心してください。
『痛み止めは我慢したほうがよい!?』
『医療用麻薬は、寿命を縮めるんでしょ?』は誤解です!!
さて、ここで医療用麻薬についてお話します。
終末期の症状緩和に対しては、かなり研究や実績が進み
マニュアルもしっかりしたものがあります。
しっかり鎮痛薬などのお薬を使用していけば、痛みなどの苦痛はかなり緩和できます。
痛みをコントロールする上で、大切なお薬、医療用麻薬(モルヒネなど)を使用することが多いのですが
そこにはまだまだ誤解があります。
・麻薬中毒にならないかしら?
・痛み止めはなるべく我慢しておいたほうがよいと聞いた
・くせになるんでしょう?
・副作用がきついんでしょ?
・『モルヒネ』を使うなんてもう最後の最後というところまで来たんですね?
・寿命が縮まるんでしょ?
・麻薬を使うと意識がなくなるんですよね?
実際、私も上記のような質問をよく受けます。
『麻薬 モルヒネ』と聞くと皆さま『恐ろしい』と感じる方が多いです。
実際は、痛みを感じている量に見合うだけのお薬を使用することで
しっかり痛みを取って、ちゃんと起きていられる分量に合わせていきます。
先程のよく聞かれる質問に対する答えとして書いてみますと
医療用麻薬(モルヒネなど)は、、、
・麻薬中毒にはなりません。
・痛みに関しては我慢する必要がありません。麻薬だけでなく、その他のお薬を組み合わせてうまく使うことで、しっかり痛みをコントロールすることができます。
・くせにはなりません。
・副作用としては、はじめは眠気、便秘、嘔気があるので、副作用を緩和するお薬もしっかり使っていきます。
・モルヒネ、医療用麻薬は、最後の最後につかうというお薬ではありません。しっかり疼痛をコントロールすることで
ご本人が楽に過ごせる時間が長くなります
・医療用麻薬で寿命が縮まるということはありません。
・痛みの強さに合わせて適正な量のお薬を使うことで、痛くなくて、起きている時間を保つようにコントロールでき
ます。
痛みをこらえる必要はありません。
患者さんと、協力しながら痛みに見合う量のお薬を探っていきます。
おわりに
さて、ターミナルケアの中でも、今日は『亡くなる数ヶ月前』にスポットをあててお話しました。
何度も言いますが
すこし刺激の強い話が続いています。
無理に読まれる必要はありません。
体と心のお元気な時に
そして誰かのことを思って、情報を欲している時に
お読みいただけたらと思っております。
次は、『残された時間が数週間の段階』の話に進んでいきます。