もの忘れ(認知症)がある方との付き合い方③(いよいよ付き合い方について)
さて、前回、前々回と認知症についてお話しして参りました。
認知症というのは
中核症状(・記憶障害 ・判断力低下 ・失見当識)があり
その状態でストレスを感じると
周辺症状(BPSD:Behavior and Psychological Symptoms of Dementia)
と呼ばれる症状が現れること。
そしてお薬ではない方法で周辺症状がかなり良くなることがあること。。。。
こういったところをお話して参りました。
【過去の記事】
・もの忘れ(認知症)がある方との付き合い方①(そもそも認知症って何?)→こちら
・もの忘れ(認知症)がある方との付き合い方②(周辺症状って何?)→こちら
今日はいよいよ、じゃあどう接すればいいのか?というところに。 まずは認知症の特性を理解しましょう。
さて認知症の介護において最大の問題は、症状の理解の難しさにあると言われております。
なんでそんなことをするのか?理解ができず不適切な対応になると、周辺症状(BPSD)を誘発しやすくなります。
そして周辺症状(BPSD)への理解にもっと悩み
さらにケアする人にストレスが溜まり
それを感じてさらに周辺症状(BPSD)が悪化するという
負のスパイラルに陥ることがあります。
でも実は前回、お話ししたように
認知症の方の中核症状の特性を考えれば
なんで今その方がその行動をとったのか了解可能なことが多いです。
また認知症の方の特徴を知ることで
そういうものなんだと
思うことができるかもしれません。
・認知症の特徴
①身近な人ほど。。。
認知症の方を診ていると、
ご家族から、
「先生の前だけ、いい格好するんですよ!!家とは違います。」というふうに言われることがあります。
それはそうです!!
私達も、ヨソの人前で態度は「ええ格好」を多少なりともすると思います。
そういう脳の機能が全く残ってないわけではないので
初めて会う人、しかも白衣着ている!ってなるとピリッとしてしまうわけです。
自分の前だけ、なんか症状が強いなあと思う場合、
その人はあなたに心を許している証拠です。
②症状がまだらである。
「なんでこれができて、あれができないの?」
「こういうことは、言うくせに!これはできない!!演技ちゃう?」
と言う言葉を聞くことがあります。
これも、当然っちゃあ当然。
脳機能というのは、不完全なものです。
本当に、これができてもあれができない!っていうものなんです。。。
だから演技なんかではないです。
③感情はしっかり残る
不思議ですが、あんなに覚えられないのに
「この人はいい感じ!!」
「この人なんか不快!!!」
という感情は不思議としっかり焼きついています。
理屈じゃないのかも。
「快」「不快」の刺激は
本能的にしっかり嗅ぎ分ける。
なのでいい関係を築けていたら、(その人にとって「快」の刺激の存在で入られたら)
ずっとなんかいい関係なんです。
否定しない、脅かさない、笑わしてくれる、美味しいものを一緒に食べてくれる、、、、
そういういい刺激を重ねていくととても穏やかな関係になります。
④こだわり屋さん。になる
そして
なんかこだわり屋さんになることも多いですよね。
そのままにしていいものならそのまま。
危険があったりすれば、うまく気をそらせる方法を考えなくてですね。
でもその人の人生史や若い時の特性をしれば、
そのこだわりも納得したります。
⑤こちらが強く出ればあちらも強く出る。
これは人間関係の常でしょうか?
強気に否定すると
強く返って着ますよね、、、、
このような特徴を踏まえて、、、
このような特徴を踏まえると
あなたの前だけ強く症状が出る→心を許している証拠。
できるところとできないところがある→脳の問題だから仕方なし
と思って
うまくその人の形成している世界を
たとえそれが現実とギャップがあっても
正そうとせず
現実問題になんとか折り合いをつけて
「快」の刺激を覚えてもらうように接し続け
強く否定したり、無理強いしないでいるうちに
穏やかになってくる。。。。。
と信じて接する。
どうしても本人も辛そうなら
内服も検討する。
例えば、これが正解というわけではないですが、
・朝ご飯を食べたのに食べてない!と言われたら、、、
→「あら!あら!ごめんなさいねえ!!それでは今すぐ準備してきますね。それまですみませんがこのミニトマトのヘタを取って準備しておいてもらえますか?(この豆の皮むき/もやしのヒゲ取り)お願いできますか??? 助かります!!! はい、お茶も置いておきますねえ」
といった具合に。
食事がもらえてない!食べてない!!と本人からしたらそのエピソード自体が抜けてしまっているわけですから
「食べたじゃないですか!!!」は全く持って本人からしたら不信感です。
何か食材を触って、今からこれが食べられるんだ!!という安心感で不思議と落ち着きます。
そうこうしているうちに
お昼ご飯です。
・例えば家なのに(入居施設なのに)「帰る!!!」と言われたら、、、
→「あら?おかえりですか?すぐに帰る準備を用意しますね?(少し間を置いて)お父さん、今日はタクシーが混んでいてもう少し後にあるようです。それまでお茶でも飲んで一休みして待ってもらえますか?(夜なら)一眠りして待ってもらえますか?私も準備してきますね。」
なんてのはどうでしょう?
私は、よくそうやって
施設の方や入院の方のの対応しておりました。
みなさん、結構おちつかれます。
訪問診療中にも、ご家族の皆様の素敵な介護をたくさん見てきました。
穏やかな介護者がいると、その方の中核症状がどんなに進行していても、周辺症状(BPSD)がないという方もたくさんおられました!!
本当に脱帽です。
ポイントは
繰り返しになりますが
ポイントは
その人が形成している世界と現実のギャップは
別に正さなくてもいいかなと思っております。
その世界は、その方の今まで生きてきた道に関係してます。
認認介護でも結構うまくいっているお宅もありました。
警察官だったお父さんと寝たきりの奥様のおふたり暮らしでしたが
夕方に「パトロール行ってくるわ!」と毎日犬を連れて散歩に行かれるお父さん。
奥様は「いつもご苦労様です。お気をつけて!!!」と送り出しておりました。
なんかそこに医療者が入って
徘徊が危ないから!とか言い出すのは
違うなあと感じていました。
その時勤めていたホームケアクリニックは、
「はい!お父さん行ってらっしゃい!ご苦労様です。じゃあ私達がその前に血圧測っておきますね!!」なんて言って
その世界を楽しんでおりました。
世の中にはこんな感じで
うまく見守っている取り組みがたくさーーんあります。
折を見て、そういう取り組みをまた紹介したいと思います。
もちろん家族だけでは煮詰まります。
こうやって「キレイゴトのようには行かないですよ」と思われるかもしれません。
毎日、介護も本当にお疲れ様です。
特に働き盛りの息子さんとかが
一所懸命母親を介護し、仕事も辞めてしまうというケースがあります。
収入が減り生活に困るということもよくあります。
どうか、そうなる前に、
社会資源(デイサービスやヘルパーさんなど)をうまく利用できるように
ひろめていきたいです。
もっというたら認知症の人が、ふらっと歩いていても安全なまちづくり
そういうものが必要なんだろうなと思います。
理想はそういった街づくりです。。。
そのためにYYCができることは、、、
模索しながら、啓蒙も続けて参ります。
あん奈