便秘の薬についてくわしく見てみましょう。

以前、便秘について
よくある症状シリーズ 〜便秘について〜はブログで紹介しました。→こちら

今日は
便秘薬の使い分けについて深堀りしてみたいとおもいます。

あ!自分のもらっている薬はコレだ!どういうお薬なんだろう?
なんで2剤必要なんだろう?

というときにご参照くださいませ!

便秘薬のアレコレ・・・・

それでは早速それぞれのお薬について見ていきます。
便秘薬は
①浸透圧性下剤
②刺激性下剤
③上皮機能変容薬
④胆汁トランスポーター阻害薬
⑤プロバイオティクス
⑥漢方薬
⑦末梢オピオイド受容体拮抗薬
に分けられます。

 

①【浸透圧性下剤】
浸透圧を利用して腸のなかに水分を取り込み便を柔らかくします

▶塩類下剤

●酸化マグネシウム(マグミット® 酸化マグネシウム®)

いわゆる「便に水を取り込んでふやかす」お薬です。

出典:製品情報[マグミット錠]. マグミット製薬株式会社. https://magmitt.com/medical/tablet/

よく出回っているお薬なので名前を知っている患者さんも多いのではないでしょうか?
妊婦さんにも大丈夫なので、妊娠中にもらったという方も多くいると思います。
比較的安価なのも魅力です。
水分を便に取り込むので、水分をしっかり摂りましょう。
用量は200mg 300mg 500mgとありますので年齢、体格、重症度などで選択します。

注)
胃の全摘を受けた方には無効です。
胃酸を抑えるお薬を飲んでいると効果が半減します。
高マグネシウム血症に注意
 (特に高齢者 腎機能障害 長期間 高用量使用時は注意しましょう。)

 

(作用機序)

酸化マグネシウムは
胃酸や膵液などの消化酵素と反応して
「炭酸マグネシウム」になって
腸管内の浸透圧を高めることで
水分を便に入れてふやかします。

 

▶高分子化合物

●マクロゴール(モビコール®):ポリエチレングリコール(PEG)製剤

出典:モビコール配合内用剤. 持田製薬株式会社.  https://med.mochida.co.jp/medicaldomain/gastroenterology/movicol/

このお薬は、「お腹は痛くない便秘の人」に向いてます。
上記のマグネシウム製剤を基本的に第一選択肢とするのですが
高齢者、腎機能障害で、先ほどお話ししたような
高マグネシウム血症がある場合にこちらを選択することもあります。

注)
・味が塩味がするので、苦手な方はジュースで割るなどの工夫が必要かもしれません。
少し高価なお薬です。

 


▶糖類下剤

●ラクツロースゼリー製剤(ラグノス®NF)

出典:ラグノスNF経口ゼリー. 三和化学研究所. https://med.skk-net.com/supplies/lagnosnf/

このお薬は、消化や吸収されずに、体内を通過していきます。
そして内服の1、2日後に下剤効果を発揮します。
アンモニアを下げる作用もあり肝硬変の方の便秘には、うってつけです。
おくすりは甘いので甘さが苦手でない人には合ってます。

 

②【刺激性下剤】
腸を直接刺激して出します。

●センノシド  ピコスルファート   センナなど

出典:センノシド錠12mg. 沢井製薬. https://med.sawai.co.jp

 

出典:ピコスルファートナトリウム内用液0.75%. 岩城製薬株式会社. https://www.iwakiseiyaku.co.jp/medical_search/internal_use/item_69

 

これらの薬は、眠る前に内服をして朝にお通じがあります。

注)
長期使用によりさらに多くの刺激性下剤が必要になると言われており
できたら長期連用しない方が良いです。
効果があるのでなかなか、中止は難しいですが。。。

 

③【上皮機能変容薬】
腸管上皮というところに作用し腸管内に向けて水分を分泌し便を柔らかくします。

●リナクロチド(リンゼス®)

出典:リンゼス錠0.25mg. アステラスメディカルネット. https://amn.astellas.jp/di/detail/lnz/index_lnz-025

このお薬は、腹痛を改善する作用を持つので
腹痛などを伴った便秘症に効果があるお薬です。(便秘型過敏性腸症候群など)

注)
服用後の下痢に注意が必要です。(用量を調整することでコントロールします。)

●ルビプロストン(アミティーザ®)

出典:アミティーザ. Viatris e Channel. https://www.viatris-e-channel.com/products/amitiza.php

このお薬は、BMI25以上の男性に適しています。
薬剤性の便秘にも効果があります。
早く効くという特徴もあり早く出したい場合はこちらでしょうか?
長く使うことで、必要な量が減ってくるのも特徴的です。

注)
・妊婦さんには使用禁忌!!!
・嘔気や下痢が出ることがありますが、続けることで消失することが多いので可能なら続けましょう。でも辛いときは減量も検討しますね。

 

④【胆汁トランスポーター阻害薬】
大腸の中へ水分を分泌される作用の他に消化管運動も促進させる作用があります。

●エロビキシバット(グーフィス®)

出典:グーフィス錠5mg. エーザイ Medical.eisai.jp. https://medical.eisai.jp/products/gof

この薬は、「胆汁酸」という消化液と関係してます。
高齢者になると、胆汁酸の合成が減少し、大腸に流れる胆汁酸の量は減ってきます。
この胆汁酸は、天然の下剤のような働きをしています。
腸管のなかに、水分を分泌させて、腸管の動きを活発にしておりました。
このお薬は、この胆汁酸の再吸収を抑制することで、腸管の中に水分を分泌させて
腸管の動きを活発にして、腸の感受性もUPさせると言われています。
便意があまりないときはこちらを。
また便の回数を増やすと言われており「回数をふやしたい」ならこちらでしょうか?
なので主に、腸管の感受性が低下しているような、慢性便秘の患者さんに効果があります。

注)
内服初期に、腸が動いて「グルグル」っと動く感じがあるかもしれません。
これは決して悪いことではなく、お腹がうごくよい兆しなのですが
はじめにお伝えしておくので、頑張って乗り越えましょう。

 

⑤【プロバイオティクス】

ビフィズス菌や乳酸菌など、いわるる善玉菌と呼ばれる町内の微生物の総称です。
腸内環境が整うことで、排便が整うと考えられています。

 

⑥【漢方薬】

便秘に効果のある漢方はたくさんあります。
一例だけ挙げておきます。

●大黄甘草湯 麻子仁丸 潤腸湯など

注)
これらは「大黄」(センナ)を含みますので長期使用で、ホルモンの乱れと似た
体の変化を起こすことがあります。(犠牲アルドステロン症)
短期間使用にとどめたいと思います。

出典:ツムラ大黄甘草湯. 株式会社ツムラ. https://medical.tsumura.co.jp/products/kampo/084.html

 

⑦【末梢性オピオイド受容体拮抗薬】

●ナルデメジントシル酸塩(スインプロイク®)

出典:スインプロイク錠0.2mg. 塩野義製薬. https://med.shionogi.co.jp/products/medicine/symproic.html

これは少し毛色の違うおくすりです。
がんの治療などで「モルヒネ」を使用する場合には
モルヒネの副作用で便秘がおきます。
その場合は、このような特別なお薬で便秘を解消する必要があります。

 

高齢者が、急に便秘になったら否定しておきたい事。

さて、高齢者は、便秘の方が多いので
なんとなく周りも「便秘」をあたりまえに感じてしまうのですが
いままでうまくいってたのに
「急に便秘になった」場合はチェックしておくべきことがあります。

大腸癌

腸に物理的に便の排泄をふせいでいるものがないかチェックします。

・薬剤性(ポリファーマシー)

高齢になるとたくさんの薬を飲まれている方が多く、症状が出る前に増量した薬剤の原因で
便秘になっていいないかもチェックしたいと思います。

ポリファーマシー

・食生活/生活スタイル

食事や生活スタイルの変化がなかったかのチェックも大事ですね。
トイレの不具合があり我慢しているとか
トイレのリズムが合わない生活スタイルだったりとか(排便したいのにデイサービスお迎えなど)
思わぬところに解決の糸口があることもあります。

おわりに・・・・

今日は、便秘の「お薬」を中心にお話しました。

今日ご紹介したお薬以外にも浣腸や座薬もあります。

また「お薬」のみにフォーカスしましたが
よくある症状シリーズ 〜便秘について〜→こちら
でもお話したように
やはりお薬だけでなく、食事、姿勢、運動、マッサージも効果あります。

ぜひいろいろ試しながら、適切なお通じをつけて参りましょう!!!

 

過去の参考ブログ

●よくある症状シリーズ 〜便秘について〜→こちら

よくある症状シリーズ 〜便秘について〜