よくある疾患シリーズ 〜片頭痛〜 【2023.3追記】
こんばんは。
やまもとよりそいクリニックの山本 あん奈です。
今日は激しい雨が降りましたね。
私もちょうど訪問診療の時が土砂降りでした。
看護師さんと「これで琵琶湖が潤ったらいいねえ」なんて言いながらの束の間のドライブでした。
私は実は雨降りも、そんなに嫌いじゃありません。
可能なら、そんな時は、お家でまったり過ごしたいですが、、(笑)
今日は「片頭痛」について少しお話ししたいと思います。
天候の変化で頭痛があった方もおられたんじゃないでしょうか?
と、その前に(おきまりの文句ですが)
私は、クリニックでは主に急性疾患を担当してます。
このブログでは
少しづつ私が普段よく診ている「よくある疾患 (common disease) 」シリーズ
についてまとめて行こうと思ってます。
もちろん
当院で診察させていただいた場合
患者さんお一人お一人に
診断をお伝えした後で
しっかりその疾患のご説明をさせていただこうと思いますが
聞き逃したり、繰り返しお聞きになりたいときに
ご自分のペースでいつでも見れるようにコツコツ書き溜めて行こうと考えております。
頭痛総論
頭痛全体のまとめの記事は→こちら
頭痛には、
脳の中に器質的に異常を認めない機能的な「一次性頭痛」と
器質的な異常を認める「二次性頭痛」があります。
「一次性頭痛」としてよく知られているのが
●片頭痛
●緊張型頭痛→こちら
●群発頭痛→こちら
の3つです。
ここでは、「片頭痛」について詳しく説明していきます。
片頭痛とは?
頭痛には、脳出血などのように何か実際に脳に問題が起こっているもの(器質的な頭痛)と
画像とかには出てこない頭痛(機能的頭痛と言います。)があります。
片頭痛は機能的頭痛の一つです。
わが国の年間片頭痛有病率は8.4%と頻度の高い頭痛です。
片頭痛という名称は頭の片側が痛むことに由来しますが、実際には4割ちかくの片頭痛患者さんが両側性の頭痛を経験しておられます。
片頭痛は前兆の有無と種類により「前兆のある片頭痛」と「前兆のない片頭痛」などに細分類されています。
機序は、少し複雑でまだ全て解明されているわけではないのですが
なんらかの刺激により三叉神経終末より炎症性物質や発痛物質が放出され,血管の拡張と三叉神経系への刺激が起こると考えられています。
片頭痛の特徴
片頭痛は女性に多いと言われています。
一回の頭痛発作は4~72時間持続します。
日常的な動作により頭痛が増悪し、頭痛発作時は仕事や日常生活に支障が出てくるほどの頭痛です。
光過敏や音過敏があります。
前兆の有無により前兆のある片頭痛と前兆のない片頭痛などに分類されています。
前兆がある人は、キラキラした光、ギザギザの光(閃輝暗点)などの視覚性前兆が最も多くみられます。
通常は60分以内に前兆が終わり、引き続いて頭痛が始まります。
発作に誘因を認めることがあります。(月経 チョコ チーズ ストレスも)
日常生活を送るのにも支障のある頭痛が繰り返し起こる、、、、
また「あの発作」が来るのでは?と思うと
色々なことを制限してしまう(人付き合いや仕事をセーブしてしまう。)
本当に大変な疾患です。
働き盛りの若い女性に多いことも特徴です。
年齢を重ねるごとに軽快することが多いです。
診断スコア(Pound)
私が研修医の時にこの診断スコアを教えていただきよく参照にしていました。
- Pulsatile quality(拍動性)
- duration 4-72 hOurs(持続時間4-72時間)
- Unirateral location(片側性)
- Nausea/vomit(悪心嘔吐)
- Disabling intensity(日常生活に支障あり)
陽性尤度比
- 4項目以上 +LR 24(かなり偏頭痛の可能性が高い)
- 3項目 +LR 3.5
- 2項目以下 +LR 0.41(偏頭痛の可能性低い)
診断は
診断をつけるのにはやはり大事なのは問診です。
初めての場合は、器質的な疾患がないか頭部CT、MRIなどの画像検査をさせていただくこともあります。
(当院では撮像できませんので、ご紹介になります。)
上記の診断スコアも参照にします。
頭痛日誌をつけていただくこともあります。
どのような程度の頭痛が、どのような頻度で起きているのか客観的に評価することが大切です。
治療は
治療は喘息の治療と似ています。
というのは、「発作期」の急性期の治療と「予防薬」の慢性期の治療に大きく二つに分かれます。
●発作期の治療
発作の程度によって使用する薬剤が違います。
聞いたことがあるかもしれませんが
アセトアミノフェン(カロナール®)やNSAID(ロキソニン®)のようなお薬で始めて
効果がない場合は『トリプタン』製剤というお薬を試していきます。
漢方薬も内服してみることがあります。
内服する時期も大事です。
内服するタイミングは早くても、遅くてもいけません。
「痛み出したら速やかに飲む!」が正解です。
だいぶ痛くなってから内服してももう効果が得られませんし
逆に痛くなりそう!という時期に早めに飲んでも効果がありません。
タイミングを逃さず、疼痛程度に見合った内服をするというのがポイントです。
程度にあった頭痛薬を相談しましょう。
★新薬も出ております。
●「レイボー®」5-HT1F作動薬 (選択的に作用)ジタン系
→詳しくは製薬会社様のサイトもご参照ください。
「トリプタン」が拡張した脳血管を収縮して頭痛を和らげるのに対して
「レイボー」は片頭痛発作を起こす物質の放出を抑えて痛みを消失させると言われています。
●予防薬
頭痛の頻度があまりに多いなら予防した方が良いかもしれません。
予防薬は、発作の頻度を押さえ込もうというものです。
主に使用される薬剤は以下です。
- カルシウム拮抗薬
- 抗てんかん薬
- β遮断薬
- 抗うつ薬
- 漢方薬
★新薬も出ております。
●「エムガルティ®」CGRP小分子拮抗薬→詳細は製薬会社様のサイトもご参照ください。
エムガルティHPより引用→web siteこちら
月1回の皮下注射で片頭痛急性期頻度を減らそうというお薬です。
予防薬を服用しているにもかかわらず、1カ月平均で4回以上片頭痛発作のある方が対象となります。
薬物乱用頭痛という頭痛をご存知でしょうか?
頭痛は慢性化しやすく
痛いときはどうしても内服をしてしまう方が多いと思います。
しかし、鎮痛薬の内服が習慣化してしまうと
今度は頭痛薬による頭痛が引き起こされると言われています。
頭痛が一月のうち15日以上あり、3ヶ月を超えて頭痛薬を定期的飲まれている場合
可能性があります。
(目安でいうと、トリプタン製剤なら一月10日以上、NSAID製剤なら一月15日以上内服している場合です。)
頭痛が辛い時にお薬をやめるのはなかなか難しいですが
治療は原因薬剤の中止になります。
予防薬も使いながら
痛みの悪循環を断ち切りたいものですね。
おわりに
さて
明日は祝日です。(もう今日ですが)
勤労感謝の日だそうです。
みなさま、日々本当にお疲れ様です。
お仕事をしておられなくても日々生きておられるだけで本当にお疲れ様です。
明日はゆっくり過ごしたいですね。
お仕事がある方もどこかで代休が取れますように。
それではおやすみなさい。
あん奈
2021.11月 初回記載
2023.3月追記