よくある疾患シリーズ 〜しつこい咳にご用心! マイコプラズマ肺炎かもしれません。〜
「歩く肺炎」???長引く咳にご用心!!
さて、最近
「微熱が続いて、咳が長引いて仕方ない」
という患者さんが多くかなりの方が来院しております。
その咳、「マイコプラズマ肺炎」かもしれません。
マイコプラズマ肺炎は
コロナやインフルエンザと同じ5類感染症で定点把握対象疾患に位置付けられており
全国約500カ所の基幹定点医療機関(小児科および内科医療を提供する300床以上の病院)から
毎週患者数(入院・外来の総数)が報告されていますが
最近、感染が拡大しており話題になっております。→こちら
マイコプラズマ肺炎ってどんな病気??
そもそもマイコプラズマって何??
細菌の一種である「マイコプラズマ」肺炎マイコプラズマ( Mycoplasma pneumoniae )に感染することで
多種多様な症状を引き起こす肺炎のことです。
マイコプラズマ肺炎は1年を通じてみられまずが、今からの季節の秋冬に増加する傾向があります。
マイコプラズマは、細菌に分類されますが
他の細菌と異なり細胞壁を持たないので
ペニシリン、セフェムなどの細胞壁合成阻害の抗菌薬には感受性がないと言われており
効果があるお薬を選ぶ必要があります。
マイコプラズマに感染すると
すべてが「肺炎」になるわけではありません。
報告により少し差がありますが10人に一人くらいでしょうか?
またマイコプラズマがカラダにダメージを与える機序には
・マイコプラズマそのものによるダメージ
・マイコプラズマに感染した方が、免疫力で押し出そうとして自分のカラダまで傷つけてしまう免疫反応
の2種類の機序があると言われています。
●アレルギーの話は→こちら
どうやってうつるのでしょうか?
感染様式は感染している人の
唾液、咳の分泌物、くしゃみのしぶきなどからの飛沫感染と
それらが知らず知らずついた手などを介した接触感染によります。
そもそも、そこまで強い細菌ではないので
人にうつすには濃厚接触が必要と考えられております。
マイコプラズマ肺炎の流行は4年周期で起こっており、そのため「オリンピック肺炎」とも呼ばれていました。
近年その傾向は崩れていましたが、パリオリンピック&パラリンピックが開催された今年、感染が急拡大しています。
ちなみにマイコプラズマの排出は
症状発現前の2~8日から出だして、
臨床症状発現時にピークとなり、高いレベルが約1 週間続いたあと
さらに4~6週間以上排出が続くとされています。
誰がかかるのか?
7~14歳位の子どもに多い病気でしたが
これまでの薬が効かない病原体が現れたこともあり、今では大人がかかることも珍しくありません。
誰でも可能性があります。
どんな症状でどのような経過をたどるのでしょうか?
咳や軽い発熱、全身の倦怠感、頭痛といった軽い症状が一般的ですが高い熱が出ることもあります。
また、長引いて慢性化したり繰り返し感染したりすることもあります。
始めは乾いた咳だったのに、どんどん痰が絡んでくることもあります。
一回かかっても、ずっと免疫がつくわけではなくまたかかってしまうことも特徴です。
多くの人は病院に来なくても自然治癒していると考えられています。
ただ、長引く咳の気管支炎となり受診されて発覚することがあります。
また、合併症として
心筋炎、中耳炎、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、膵炎
溶血性貧血、関節炎、皮膚炎など多彩なものが引き起こされることもあります。
どうやって診断をつけるのでしょうか?
当院では、問診、聴診、レントゲン、採血検査などで総合的に判断しております
まず聴診器で肺の音を聞かせていただきます。
まれに、胸部レ線上異常陰影があっても、聴診上異常を認めないこともあり、胸部レントゲン検査が欠かせません。
レントゲンでは多様なパターンをとります。
血液検査所見では
白血球数は正常もしくは軽度上昇くらいです。
CRP という炎症の大きさを見る項目も軽度〜中等度上昇程度です。
肝機能障害が出ることもあります。(約30%程度)
確定診断には
咽頭拭い液、喀痰よりマイコプラズマを分離して培養することが一番確実ですが、
早くても1 週間程度かかるため、通常の診断としては有用ではありません。
近年迅速診断としてPCR 法が開発されており、臨床的に有用性が高いのですが
実施可能な施設は限られており、当院も申し訳ないですが現在やっておりません。
咽頭ぬぐい液で、マイコプラズマ抗原を検出するキットもあります。
この検査は簡単にできて、すぐに結果がわかる利点はありますが
検査のタイミングなどによって結果が左右されることもあります。
医師は問診やほかの検査結果も参考にしながら診断します。
→当院では、必要時にこのキットを使用します。(全例ではありません。)
また
また血液検査を2週間ほど開けて2回行い、1回目と2回目で4倍以上の上昇があれば診断がつきますが
2回目の採血の頃には治ってますので、採血を2回行うのも現実的ではありません。
そこで、精度は下がりますが1回の採血で抗体価の測定を行い参考にすることはあります。
(外注検査で2日後にはわかります。)
この抗体検査をするかは、その都度相談させていただきますね。
また血液を使用したこのマイコプラズマ抗体IgMの迅速キットもあります。(当院は、これも現在のところ導入してません)
当院では
問診や、一般採血、レントゲンを参考に
「確定診断」にはこだわらずに相談の上、治療を開始させていただくこともあります。
確定診断が必須の時には、「抗原キット」の検査を検討いたします。
治療は、どうやってしますか?
マイコプラズマ肺炎は自然に治ることもあり必ずしも抗生剤が必要というわけではありません。
でも基本的には効果のある抗生剤の処方になります。
軽症で済む人が多いので外来通院での治療がほとんどですが、重症化した場合には、入院して治療が行われます。
最近は、一般的な抗生剤の効果がない「耐性菌」も出ております。
「耐性菌」が疑われる場合は、他の抗菌薬で治療します
抗菌薬に加え、咳がひどいときは咳止め薬、熱が高い場合は解熱薬が処方されることもあります。
また、合併症が認められたときは、そちらの病気を治療するための薬も使用します。
一般的な事ですが
なるべく体を休め、水分を補給しながら過ごしてください。
また症状が治まった後も、病原体はまだ体内に残っている可能性があります。
しばらくは登校や通勤の際はマスクを着用し、他人への感染を防ぎましょう。
また、咳が収まるまで激しい運動は控えましょう。
おわりに
テレビでも
聞き慣れない「マイコプラズマ」という言葉が聞こえてきて
不安になる方もおられると思います。
以前からある病気ですので
過度にご心配なさらないでください。
また、咳を起こす疾患は、「マイコプラズマ」以外にたくさんあります。
咳が長引いて心配な方は一度受診をご検討ください。
咳嗽がひどいときは
他の患者様と分けた部屋での診察を行うことがあります。
受診前に一度お電話いただけると幸いです。
あん奈
過去の参照ブログ
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