発熱外来は、コロナウイルス感染症が多い毎日ですが。。。中にはもちろん違う病気も潜んでいるので要注意です。 よくある疾患シリーズ 〜急性腎盂腎炎〜

 

こんにちは。
ここ最近は
発熱外来に、日々多くの患者様が来院されております。

当院の発熱外来について→こちら

2023.5.8〜コロナウイルス感染症が『5類感染症』移行後の当院の発熱外来について

最近の発熱外来は
コロナウイルスPCR検査が陽性になる方がたくさんおられます。
公費負担ではなくなったので
検査を希望されない方もおられますから
実際にはもっと多くの方がコロナウイルスに罹患していると考えられます。

でも、日々たくさんおられる『発熱』患者さんの中には
もちろんコロナウイルス感染症ではなく
それ以外のいわゆる『風邪』でもなく
別の病態で発熱している方がおられるので
その見分けがとても大切になってきます。

私達医師は
このような『コロナウイルス』『インフルエンザ』などの感染症流行期にこそ
『次の患者さんもたぶん、コロナ感染症だろう』
『次の患者さんも多分インフルエンザ感染症だとうな』と
思考を狭めないように
それ以外の疾患を見逃さないように!!と教育をされてきてます。
発熱外来で勤務されている医師たちは
日々そのことに気をつけて診察しておられます。

咳、鼻水、喉が痛いなどの
いわゆる風邪症状がない方は『要注意』です。

発熱以外の症状にどんな症状があるか?
そこがとても大事になってきます。

つい先日の発熱外来で・・・・

先日も
発熱外来に当院初診の方が受診されました。

腎盂腎炎

問診票には
『40度の発熱 おとついから。風邪症状はなし。』
『家でコロナ抗原検査しましたが陰性でした。症状を抑える薬を希望します。』
とあります。

発熱外来ブースで
診察が始まりました。
問診ではやはり
まったく咳、鼻水、喉の痛みなどと言った風邪症状はないそうです。
また問診票には書いておられませんでしたが
詳しくお伺いすると
『排尿するときの痛み。 腰の痛み』もあるそうです。

診察させていただくと
喉を診ても全く腫れていません。
肺の音もきれいです。

腎臓のある腰を叩かせていただくと
『痛い!!!』
と明らかな痛みがありました。

腎臓叩打痛

急性腎盂腎炎を疑いました。

発熱外来のブースから出ていただき
院内に入っていただき
尿検査、採血、腎臓エコー検査を追加しました。

尿検査では、細菌尿で白血球数も多く(尿に細菌が入って戦っている状態)
採血では、かなりの炎症反応が見られました。(白血球 CRP高値)
エコーでは、腎臓結石の存在を否定しきれませんでした。

尿路結石(閉塞)を伴う急性腎盂腎炎
菌血症になるのが怖いな・・・

そう思い

泌尿器科の先生による処置もお願いする可能性があり
大きな病院に緊急で搬送になりました。

よくある疾患シリーズ 〜急性腎盂腎炎〜

●どんな病気か

腎盂腎炎は
腎臓の『細菌』感染症です。

腎臓でつくられた尿は、腎盂(腎臓内の尿のたまるところ)、尿管を経て膀胱に溜められ、尿道から排出されます。
この尿の通り道には普段は細菌がいませんが
外界と通じている膀胱に細菌が感染すると逆行して腎盂にまで炎症が及ぶことがあります。

尿路の構造

●どんな症状になるか

腎臓は左右の腰に一つずつある臓器です。
どちらかの腎臓に炎症が及ぶ事が多いのですが
この方のように

・高熱
・寒気

・膀胱炎症状(排尿時痛、頻尿、残尿感等)
・背中や腰の痛み
・体の怠さ
・吐き気や嘔吐

が起きてきます。

●どんな検査が必要なのか

さて、問診や身体診察から
『急性腎盂腎炎』を疑う場合は検査をして
『確からしさ』を詰めていきます。

具体的には
・尿検査
・採血
・腹部超音波検査(エコー検査)

を行っていきます。

 

腹部超音波検査で何をみているかというと、大きなポイントとして尿の通過障害がないか確認をしてます。
後述するように
いくら適切な抗生剤を使用していても
尿の流れを妨げるような結石などがあると
なかなか尿の細菌を一掃できません。
その場合、細菌が血流に及ぶと
命に関わる可能性もでてきますので、大きい病院に搬送し泌尿器科の先生に処置していただく必要も出てきます。

 

また『どの細菌なのか』を同定するために
尿や血液を採取して培養する
・血液培養
・尿培養

検査も大事です。
ただクリニックでは在庫を抱えるのには限界があり
血液培養のボトルは置いていないクリニックもあります。

 

そして

・腹部(造影)CT

もやはりとても有用です。
エコーで見える範囲は一部ですので
やはりもっと詳細に
腎臓の周囲に膿が溜まっていないか
もっと小さな結石の存在
腫瘍の存在などを調べるためには造影CTが優れています。
ほとんどの個人クリニックにはありませんので大きな病院にご紹介になります。

●ときには命のかかわる状態になります。

腎臓は血流が豊富です。

細菌が血液に入ってしまうと菌血症という状態になり
適切な時期に抗生剤が投与されないと
『敗血症』という命にも関係ある重篤な状態を引き起こすこともあります。
血圧が下がり、意識が落ち、時には命を落とすこともあります。

 

●どんな治療が必要か

細菌をやっつけるためには
基本的には
・抗生剤投与
が必須になります。

抗生剤点滴

 

ただし前述のように
尿が流れ出る道に、結石などの閉塞があると
抗生剤がなかなか効きません。

尿路結石などの
尿の妨げになるものがないか
もし閉塞起点があれば泌尿器科の先生に相談して処置して頂く必要があります。

泌尿器科Dr

 

●よくある疾患シリーズ 尿路感染症(膀胱炎/腎盂腎炎)→こちら

よくある疾患シリーズ 〜尿路感染症(膀胱炎/腎盂腎炎)〜

 

おわりに

さてこの例はほんの一例です。
発熱を起こす疾患は世の中にたくさーん!!あります。
扁桃周囲炎、肺炎、憩室炎・・・・・
発熱外来はとても多彩に富んだ外来です。

 

当院の発熱外来のシステムは
発熱は患者さんにとっていつ出るのかは基本的に予測がつかないので
基本的には当日にお電話を頂いてます。
そして定期の慢性疾患のご予約の患者さんの間に
当日(場合によっては翌日に)ご予約をお取りして
感染拡大に配慮して
発熱外来ブースで
防護服を着用して
診察させていただいております。→こちら

いわゆる風邪症状があり
コロナウイルスPCRやインフルエンザPCRが陽性となる患者さん、
また検査は陰性でも
いわゆる『風邪』『夏風邪』といわれる
『急性ウイルス感染症』『急性上気道炎』が圧倒的多数ですが

なかには
このような『ウイルス感染』ではない疾患の方も紛れていらっしゃいます。

どうしても『発熱がある』という段階で
普通に発熱外来のご予約の中にどうしても紛れ込んでしまいますので
診察に伺って初めて『別の病気の存在を疑う』ことができることがあります。

 

そのため
診察の具合によって
緊急の度合いが上がり
診察順番のいれかわりや
場合によっては、他の患者さんをお待たせしてしまうことがございます。

しんどい中
暑い中で
受診くださっているのに大変申し訳無いですが
ご理解いただけると幸いです。

みなさま
早いものでもう夏も終わりにさしかかってきました。
とはいえまだまだ暑い季節が続いております。
どうぞお体ご自愛下さいませ。

 

あん奈