よくある疾患シリーズ 〜キズ(床ずれなど)の処置に対する基本的な考え方〜
皆さま。
こんにちは。
紅茶に詳しいスタッフさんのおかげで
快適な紅茶ライフを送っている今日この頃です。
診察室にも、いつも素敵なメッセージと共に用意してくださるので
いつも診察室に入るのに楽しみができました。
優しいメッセージと共に、今日はどんな飲み物だろうと
ワクワクし幸せを感じております。
私にまで「よりそって」くださるスタッフさんに感謝感謝です。
スタッフさんたちが、心の余裕を感じながら、笑顔で、のびのび、イキイキと働ける職場にすることが私の仕事の一つと考えております。
さて、自宅でブログを書くときも
基本的に温かい飲みものをお供にしております。
この、アメージングチョコモルトは、教えていただいて個人的にはどハマりしております。
(これは、実は、さほど、、いやあまり、勧められてないのですが、、私的にはビンゴ!です)
香りは完全にチョコ!です。
チョコの香りに癒されながら
さて、今日の記事は、、、
紅茶とは残念ながら関係ありません(笑)
すみません。
基本的な、キズの処置創傷ケアについてお話ししたいと思います。
★よくある疾患シリーズ、過去のブログはこちらです。
・そろそろ、熱中症の季節です。→こちら
・風邪→こちら
・インフルエンザ→こちら
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・尿路感染症(膀胱炎/腎盂腎炎)→こちら
・蜂窩織炎/壊死性筋膜炎との違い→こちら
・急性胃腸炎→こちら
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・急性虫垂炎(いわゆるモーチョーは盲腸の病気ではないんです!)→こちら
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キズ(創傷)の基本的な考え方。潤ったまま治していく。
今日の、話題に出てくる創というのは
スパッと鋭利なもので切ったキズというよりは
床ずれや、転んで擦りむいたような創をイメージしてください。
なんとなく子供の頃、「カサブタができたら治りかけ!」とか「乾かしとけば良い!」なんて言われたことはないでしょうか?
私も子供の頃、なんとなくどこかでそう習った気もしますし、そう思っていた気もします。
でも今は、その考え方とは全くもって逆の新しい考え方になってきてます。
創部は、湿潤(潤った)環境で治していくもの!
というのが今の新常識です。
少し、難しい用語で言いますと、湿潤環境下での創傷治癒が創傷治療の基本です。(moist wound healing)
傷の治りを妨げるものを取り除くと言う考え方
基本的に、傷(創)の治療の基本のキ!
よく洗うことが大事です。
傷は、よく洗い、異物を取り除き、適度に潤った環境を清潔に保っていけば治る!
と言うのが基本スタンスです。
なぜよく洗う必要があるのでしょうか?
少し言葉はややこしいかもですが
創面環境調整と言う考え方があります。
創面、傷の面が治っていくには一連の過程がありますが
その経過の中で
傷が治っていく過程を妨げるものを取り除いて、正しく治癒が進むようにコントロールしていきましょう!と言う考え方です。
では、どういったものが傷の治りを妨げるのでしょうか?
次の段落に進みます。
TIMEコンセプトという考え方
前の項で
傷(創)が治っていくためには、創面環境を適切に調整することが必要という話をしました。
傷の治りを阻害しているものを取り除いたりコントロールしていく必要があります。
傷(創)が治っていくためにコントロールすべきものは、頭文字をとってTIMEと覚えたりします。
・T:tissue(組織) 壊死組織
・I:Infection /Inflammation(感染/炎症)
・M:moisture 水分バランス
・E:edge 辺縁がスムースか
まずT:tissue(組織) 壊死組織
傷(創)が治っていく過程を、ご自分のでも良いですし、どなたかのを見たことがあるでしょうか?
傷(創)ができると、傷面に何やらモロモロとした一見汚ないような組織がついていることがあります。
これを壊死組織と言います。
壊死組織というのは、血流が途絶えたいわば死んでしまった組織ですので置いておくと細菌の温床になります。
まず、傷に付着した壊死組織は石けんをつけて綺麗に取り除く必要があります。
石鹸で洗うだけで落ちないときは、積極的に取り除く(除去する)必要があります。
この除去のことをデブリードマンと言います。
聞きなれない言葉だと思います。
デブリードマン(除去)の方法はいろいろあります。
外科的に取り除くこともあれば、塗り薬で溶かして(融解して)取り除いたりします。
次にI:Infection /Inflammation(感染/炎症)のコントロール
傷が感染してたり炎症があれば、感染や炎症を制御しないと治りません。
抗生剤の飲み薬や塗り薬を検討していきます。
そしてM:moisture 水分バランス
傷ができると、傷からじわっと液が滲み出てくると思います。
これは滲出液と言って、傷が治るための成分をたくさん含んでいます。
この滲出液の水分が多すぎても、少なすぎても治りが悪くなります。
次の項でまた少しお話しします。
最後にE:edge 辺縁がスムースか
傷の面(創面)と正常の皮膚の隙間(ポケットと言います。)や盛り上がりなど段差があると治りが遅いです。
この場合はあえてその創縁を一度切除したり、溝を開放したりして創面をならすという方法も行うことがあります。
このようにTIMEコンセプトという考え方にそって
壊死組織も感染もコントロールされた平坦な創部にして
適切に潤った環境を維持していくこと
これができれば、ほとんどの傷(創)は綺麗に治っていきます。
適切に潤わせたまま治っていくとは?
先ほどお話しした、TIMEコンセプトのM:moisture 水分バランスについてもう少しだけ。
傷(創)ができた時に、傷(創)から液みたいなものが出てくることは経験があると思います。
この液体は、滲出液(しんしゅつえき)と言って、実は、創が治るのに必要な成分がいっぱい含まれています。
なので悪いものではありません。
むしろ、傷(創)が治るのには、この滲出液はないといけません。
でも、この滲出液が多すぎて、傷の周りがふやけてしまうというのも逆に問題なのです。
少なすぎても(乾燥)、多すぎてもいけない。
実は、塗り薬にしても上から貼るテープ(ドレッシング)にしても実はこの滲出液のコントロールに一役かっています。
塗り薬にしても、貼るテープにしても
水分を傷から吸い取ってくれるタイプのものと、傷に水分を与えるタイプのものがあります。
なのでしっかり傷をみて、滲出液の量をコントロールしていくことが創傷治癒のキーポイントです。
塗り薬のあれこれ・・
さて、傷を治していく塗り薬には
本当にたくさんの種類があります。
どのように選んでいくものでしょうか?
実は塗り薬は、薬効を持っている主薬に薬効のほとんどない基剤(油っぽいかさらっとしているか)から成り立っています。
先ほどの、M:moisture 水分バランスについて
でお話ししたような滲出液のコントロールは
実は塗り薬の基剤部分が影響します。
親水性と言って水が好きで吸収してくれるような基剤とベタベタした油分の多い水を嫌うような基剤。
つまり、平たくいうと創部から液を吸い上げるタイプと、逆に水気を創部に与えるタイプ。
まず、塗り薬を選ぶ、一点目の視点は、滲出液の量にあわせて、そのどちらを選ぶかという視点です。
次に先ほどのTIMEコンセプトに沿った主薬の選択です。
壊死組織を除去してくれるもの、感染を抑えるもの、そして治りを早くしてくれるもの(上皮化促進)どの薬効を持っているかで選択します。
TIMEコンセプトはこの順で治療を優先させます。
つまりまずは壊死組織を除去してくれる作用のあるものを選んで、感染があれば、抗菌作用を有するもの、壊死組織と感染がなくなれば、今度は、治りを促進してくれるお薬をその経過中の滲出液の量を考えながら参考に選んでいきます。
繰り返しになりますが
壊死組織が取り除かれ、感染がコントロールされた綺麗な環境で、潤ったまま治っていく
というのが基本の治癒スタイルです。
貼るテープ類のあれこれ・・・
傷の処置を受けて、どのテープを貼るか?
絆創膏でいいのか?
実は巷には、たっくさーーんの貼るテープが出ております。
難しくいうと、「創傷被覆・保護材」と言います。
今まで述べてきた、湿潤環境形成を目的とした最近の近代的な創傷被覆・保護材を「ドレッシング材」と言います。
どのドレッシング材を選択するか?
それは基本的に上でお話したTIMEコンセプトに沿って
その時に必要な薬効(壊死組織を取り除きたい?感染を抑えたい?)や滲出液の量(多い?少ない?)などといった用途を選んで、選択していきます。
いかがでしたでしょうか?
「カサブタができたら治る!」「乾かしておけば!!」というふうに思ってらっしゃった方は
目から鱗だったのではないでしょうか?
ドラッグストアでもこのコンセプトに沿った絆創膏などが売られていますので
もしよかったら手に取ってみてみてくださいね。
今日の傷(創)はスパッと切った傷というよりは、転んで擦りむいたとか、床ずれのような傷(創)をイメージしております。
スパッと切った傷は、丁寧に洗い、皮膚の断面と断面がずれないように
固定しておくことができれば、自然治癒力で
同じ層同士がくっついて、勝手に治ります。
テープで固定するだけでも理論的にはキレイにくっつきますが
どうしても日常生活でずれてしまう場合は、縫った方が早いこともあります。
縫合は、縫い合わせているんではなくて
正しい層同士が、くっついていけるように位置ぎめをしているだけなんです。
今日は、紅茶から始まったのに
痛々しい話題ですみませんでした。
それにしても、人体ってすごいですよね。
次、もし擦りむいてしまったら、、、まずは痛いですが、頑張ってよく洗ってくださいね。
でも、そんなことなるべく起こりませんように。
あん奈